地球温暖化は、地球環境や身近な生態系に
さまざまな悪影響をおよぼしています
世界の平均気温は最大5.7℃上昇
IPCC※第6次評価報告書では、1850年~1900年と比べて、化石燃料依存型の下で気候政策を導入しない最大排出量シナリオ(SSP5-8.5)の場合、2081年~2100年の世界の平均気温は、3.3~5.7℃上昇、持続可能な発展の下で気象上昇を1.5℃以下におさえるシナリオ(SSP1-1.9)をとった場合でも1.0~1.8℃上昇する可能性が高くなります。
- Intergovernmental Panel on Climate Change
(気候変動に関する政府間パネル)


いずれの水準の温暖化でも、陸上は海洋上よりも温暖化し、北極および南極は熱帯よりも温暖化する。

降水量は、高緯度帯、赤道太平洋および一部のモンスーン地域で増加するが、亜熱帯の一部および熱帯の限られた地域で減少すると予測される。

基準となる状況で乾燥している地域では、比較的小さな絶対値の変化でも、割合として見れば大きな変化として現れることがある。
平均海面水位は最大1.01m上昇
化石燃料依存型の下で気候政策を導入しない最大排出量シナリオ(SSP5-8.5)の場合、2100年までの世界平均海面水位は、1995年~2014年に比べて63cm~1.01m上昇する可能性が高いと予測されています。
一方、持続可能な発展の下で気象上昇を1.5℃以下におさえるシナリオ(SSP1-1.9)をとった場合でも28cm~55cm上昇する可能性が高いと予測されています。


※表中の赤い点線はSPP5-8.5の下での氷床の不安定なプロセスを含む、可能性が低くとも影響が大きい場合の予測
* 1900年を基準とした変化は、シュミレーションおよび観測による1995年~2014年を基準とした変化に0.158mを加えて算出。
21世紀末の日本の気候は、20世紀末と比べて・・・
IPCCの報告を踏まえた文部科学省と気象庁の予測
文部科学省と気象庁は、IPCC第6次評価報告書のシナリオをもとに、日本独自の高解像度気候モデルと観測データを組み合わせて、将来の気候を予測しています。ここでは、こうした手法により得られた日本の気候変動予測の内容を紹介します。
この予測で使われているシナリオについて
2℃上昇シナリオ | 4℃上昇シナリオ |
---|---|
パリ協定の2℃目標が達成された世界で生じ得る気候の状態 黄色で表示 | 追加的な緩和策を取らなかった世界で生じ得る気候の状態 赤色で表示 |
※「2℃上昇」「4℃上昇」とは、工業化以前と比べた世界平均気温の上昇量のこと
猛暑日や熱帯夜はますます増加
年平均気温はいずれのシナリオにおいても上昇し、多くの地域で猛暑日や熱帯夜の日数が増加、冬日の日数が減少すると予測されています。
2℃上昇シナリオによる予測 | 4℃上昇シナリオによる予測 | |
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年平均気温 | 約+1.4℃ | 約+4.5℃ |
【参考】世界の年平均気温 | (約+1.1℃) | (約+3.7℃) |
熱帯夜の年間日数 | 約+2.9日 | 約+17.5日 |
猛暑日の年間日数 | 約+8.2日 | 約+38.0日 |
冬日の年間日数 | 約-16.6日 | 約-46.2日 |
激しい雨が増える
いずれのシナリオにおいても、極端な大雨が発生する頻度も、発生したときの降水量も増加することが予測されています。
2℃上昇シナリオによる予測 | 4℃上昇シナリオによる予測 | |
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1時間降水量50mm以上※の年間発生回数 | 約1.8倍 | 約3.0倍 |
日降水量100mm以上の年間日数 | 約1.2倍 | 約1.4倍 |
年最大日降水量の変化 | 約+12% |
約+27% (約+28 mm) |
日降水量が1.0mm未満の日の年間日数 | (明確な変化傾向なし。) | 約+9.1日 |
雪ではなく雨が降る
年最深積雪・年降雪量は4℃上昇シナリオでは全国的に減少し、2℃上昇シナリオでは本州以南で減少すると予測されています。ただし、本州の山間部等の一部地域では極端な大雪時の降雪量が増加する可能性があります。
2℃上昇シナリオによる予測 | 4℃上昇シナリオによる予測 | |
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年最深積雪及び年降雪量 | 約-30% (北海道の将来変化は小さく、予測が難しい。) |
約-60% |
降雪期間 | (変化は明瞭ではない。) | 短くなる (始期が遅れ、終期が早まる。) |
台風は強まり、台風に伴う雨は増加
地球温暖化に伴う水蒸気量の増加や海水温の上昇が影響して、日本付近の台風強度は強まり、台風に伴う降水量も増加すると予測されています。
世界平均よりも大きく上昇
いずれのシナリオにおいても、日本近海では海水温が上昇すると予測されています。日本近海の海面水温上昇は一様ではなく、 上昇幅は、2℃上昇シナリオでは黄海で、4℃上昇シナリオでは釧路沖や三陸沖で大きくなっています。
2℃上昇シナリオによる予測 | 4℃上昇シナリオによる予測 |
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値のみの海域 :海面温度が上昇すると予測する海域
値に「*」を付した海域:海面水温の上昇傾向が現れると予測される海域
値に「#」を付した海域:予測結果に明確な変化傾向は 見られない海域
21世紀中に上昇し続ける
長期的な平均海面水位の上昇は、高潮や高波による影響を底上げすることにつながるため、浸水リスクを増加させると予測されています。
2℃上昇シナリオによる予測 | 4℃上昇シナリオによる予測 | |
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日本沿岸の平均海面水位※ | 約+0.40m | 約+0.68m |
【参考】世界の平均海面水位※ (IPCC, 2021) |
(約+0.44m) | (約+0.77m) |
「日本沿岸の平均海面水位」は2081~2100年の平均値を1986~2005年の平均値と比較したもの、「世界の平均海面水位」は2100年時点の予測値を1995~2014年の平均値と比較したもの。
オホーツク海の海氷面積が減少する
海氷が多くつくられるシベリア沿岸での生産量が減ることが予測されています。その影響で海氷が流れてくる北海道のオホーツク海沿岸でも、海氷の量が少なくなると見込まれています。
2℃上昇シナリオによる予測 | 4℃上昇シナリオによる予測 | |
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オホーツク海の海氷面積(3月) | 約-32% (ただし、この数値は現在気候の年々変動の範囲内。) |
約-78% |
海洋生態系への影響が懸念される
日本周辺の海では、海洋の酸性化が世界平均と同じくらいの速さで進むと予測されています。海が酸性になると、サンゴや貝などが殻や骨格を作りにくくなり、海の生態系に影響を及ぼすおそれがあります。
2℃上昇シナリオによる予測 | 4℃上昇シナリオによる予測 | |
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日本周辺海域の表面海水pH | -0.06~-0.09 (2060年頃までに海洋酸性化の進行が止まる。) |
-0.29~-0.36 |
日本にも深刻な影響が予測される地球温暖化
わたしたちの家庭でも、より強い温暖化対策をとることが求められています
地球温暖化の原因となっているCO2を削減するために、家庭で使うエネルギーの削減が求められています。
わたしたちが暮らしの中で地球温暖化の防止(CO2の排出低減)に協力できることは、一人ひとりがエネルギー使用の無駄を見直して、無理なく節電に取り組むことなのです。
地球温暖化による影響【世界全体】
温暖化による影響 異常気象
砂漠化
砂漠化の原因は、地球規模での大気循環の変動による乾燥地の移動という気候的要因と、人為的要因(過放牧、過耕作、薪炭材の採取等)の2つが挙げられます。 1977年のUNCODの報告によると、世界各地で毎年6万km2の土地が砂漠化で失われたことになり、現在もなお同じ割合で砂漠化した土地が増加し続けています。 これはほぼ九州と四国を合わせた面積に相当します。

(1996.5, Yu Nakamura)
台風・ハリケーン
大型ハリケーン「ミッチ」が直撃し、町が水浸しとなった。地球温暖化が進むと、ハリケーンなど熱帯低気圧の威力が強まるといわれています。

(1998.10,AYUCA)

(1998.10,AYUCA)
温暖化による影響 食糧問題
穀物生産量が減少
地球の平均気温が2.5℃程度上がると、食料の需要に供給が追いつかず、食料価格が上がると予測されています。
農産物の自給率が低く、他の国に食料の多くを頼っている日本は、食料確保の面で大きな影響を受ける可能性があります。

温暖化による影響 健康
人の健康への影響のあらわれ方
温暖化が人の健康に及ぼす影響には、2003年夏の欧州を襲った熱波などのように直接、ひとの死亡率などに影響が及ぶ場合と、マラリアやデング熱など病気を媒介する動物の生息域の拡大などを通じて間接的に影響が及ぶ場合があります。

(2005.7.28,国立感染症研究所 昆虫医科学部)
温暖化による影響 水位上昇
氷河の崩壊
アンデスから崩落するペリト・モレノ氷河。
地球温暖化によって氷河が滑り落ちる速度が早くなったと言われている。

(2001.1.1栗林浩)
海面の上昇
最悪の場合*2100年には、平均海面水位が最大63cm~1.01m上昇すると予測されています。(*シナリオSPP5-8.5)
環礁のため内陸から湧き上がった水によって浸水している町(浸水後)。

(2002.5,Masaaki Nakajima)
この島には9本の椰子の木しか残されていない。椰子などの根は、波から砂の流失を防ぎ島を守っているが、これだけ小さくなってしまうと守りきれず、水没してしまう島だと言われている。

(2005.3,Shuuichi Endou(Tuvalu Overview))
日本での地球温暖化による影響
日本での温暖化影響の全体像
温暖化が進むと、まず気温の上昇や雨の量の増加、海面の上昇などが生じます。
また、台風、熱波やエルニーニョなどの異常気象も頻度が増し、より強くなると予想されています。
そうなると、自然や社会にも、さまざまな被害が生じることになります。

すでに始まっている地球温暖化の様々な影響
地球温暖化の影響は日本でもすでに現れており、気候の変化は生態系を変え、農作物へも影響。また日本特有の自然や文化に影響を与え始めています。
- 全国の1時間降水量80mm以上の年間発生回数は増加しています(統計期間1976~2024年で10年あたり2.4回の増加、信頼水準99%で統計的に有意)。
- 最近10年間(2015~2024年)の平均年間発生回数(約24回)は、統計期間の最初の10年間(1976~1985年)の平均年間発生回数(約14回)と比べて約1.7倍に増加しています。

- 全国の猛暑日の年間日数は増加しています(統計期間1910~2024年で100年あたり2.6日の増加、信頼水準99%で統計的に有意)。
- 最近30年間(1995~2024年)の平均年間日数(約3.0日)は、統計期間の最初の30年間(1910~1939年)の平均年間日数(約0.8日)と比べて約3.9倍に増加しています。


(1998.9/Kyoko KAWASAKA)

(2002.9/登坂克男)

(農研機構 果樹研究所 杉浦俊彦)

(農研機構 果樹研究所 杉浦俊彦)